独立会計士のおぼえがき

独立会計士として過ごすためのあれこれを文章にしてみる。

独立のリスクについての話

 公認会計士/税理士のたわしです。今回はリスクについてのお話です。

 独立するかどうかを悩む段階では、とにかく独立のリスクが気になるところかと思います。

 私の場合は監査法人時代もそう派手な生活をしていたわけでもなく、多少の蓄えもあったため、まあやってみて全然駄目なら就職先探すか、くらいの軽いノリで始めてしまっています。

 とはいえ事情は人それぞれでしょうし、安定した会社勤めを捨てて独立するという選択は、そこまで軽い決断ではないでしょう。

 結論を先に言ってしまうと、身構えるほどのリスクはないと思うよ、ということなのですが、今回はそのあたりのお話をしようかと思います。

 というわけで、今回のお品書きです。 

 独立時の状況について

  独立時の状況は人それぞれかと思います。私の場合はこんな状況でした。

  • 監査法人勤務は5年半くらい(マネージャー(管理職)経験はなし)
  • 監査法人より前の前職はなし
  • 業務経歴はほぼ監査業務のみ
  • 独立を決めたものの、仕事の当ては特になし

  ご覧いただくとわかる通り、業務経歴としてはほとんど監査しかないという状況です。大手監査法人の監査事業部に所属している方の場合珍しくもないかもしれませんが。

 私の場合、コンサル系の仕事に関しては完全に手探りスタートということになりました。

 いわゆるコンサル系の仕事は、「過去に同種業務の経験があること」が募集要件となることも多いです。各種財務会計支援・管理会計支援・J-SOX導入支援・M&A支援等は独立会計士の仕事としても一般的な内容ですので、このあたりの業務経験ありで始められる方は、正直羨ましかったりもします。

 以上の通り、特に独立向けの経歴でもない身でしたが、これまでの実体験を踏まえて結論から言ってしまえば、少なくとも現状では独立したところで食うに困ることはないと思います。また、生活が成り立たないので再就職した……という話も聞いたことがありません。

 それは、会計士には独特の強みがあるからだと思います。

 会計士の強みについて

 結論から申し上げると、会計士には監査ができるということです。より具体的には、会計事務所や監査法人で非常勤として働けるということです。

 時給制・日給制それぞれありますが、私が見聞きした中では日給にして最低3万円~最高7万円程度、平均すれば5万円程度でしょうか。実際、私も独立してから現在まで、ある監査法人で非常勤として勤務しています(年間60日~70日程度)。

 現在、監査業界は人手不足であり、非常勤監査の働き口がない、ということはあまりないと思います。大手監査法人に定期採用で入社した方からは想像がつきにくいかもしれませんが、中小監査法人はかなりの数が存在しますし、中には常勤職員を一切雇用せず、非常勤職員のみで構成されている法人もあります(採用コストや教育コストをかけるよりも、多少単価が高くても最初からスキルのある人材を集めてしまった方が結果的に安上がり、ということのようです)。

 「なんだそんなことか」と思われるかもしれませんが、独立会計士にとってはこれがある種のセーフティネットとして作用します。所属する監査法人や関与するクライアントにもよりますが、非常勤職員であれば日程の融通もききやすく、自分の仕事を獲得するための営業など(このあたりは別途記事にしようかと思います)を進めつつ、ある程度安定した収入を見込むことができます。

 文字通り収入が0になってしまうということがない、という点は他の士業と比べても会計士の大きなメリットといってよいのではないかと思います。

 ちなみに、実際に非常勤としての働き口を探す方法としては以下のようなものがあります。

  • 現職の監査法人を非常勤に切り替える(これから独立する人向け)
  • JICPA Career Navi(日本公認会計士協会の求人ページ)で探す
  • 監査法人のホームページ(求人情報)からコンタクトを取る
  • 監査法人のパートナーを知人に紹介してもらう(私の場合はこれでした)

 などなど。おそらく、どのパターンでも報酬面の条件はそう大きくは変わらないと思いますが、通勤費・遠隔地手当(出張手当)・ランチ代(!)等の細々とした点では多少個性があるようです。  

ぶっちゃけ最初の1年どうだった?

  赤裸々に数字を出してしまうと、概ね以下の通りです。

売上:約550万円・・・コンサル等の売上

給与:約400万円・・・監査非常勤

経費:約300万円

 以上の通り、税前利益で650万円程度となりました。私の場合は事務所を借りましたので、経費にはその家賃と各種備品購入代が入っています(自宅兼事務所で始めれば経費は半分くらいで済むと思います)。ここから税金と社保を引いた金額が手取りになってきます。

 また、平日の稼働率のイメージでいうと、直接報酬の対象となる稼働が5~6割くらい、総務・経理その他もろもろ雑務込みで7割~8割くらいでした。

 1年目の実績としてどうだったか、という点については、各人の価値観やライフスタイルによって評価が分かれるところかと思います。が、私個人としては、監査法人に常勤で務めていた頃よりはかなり少ない拘束時間(と何よりはるかに少ないストレス)で、生活に困らない収入は得られた、というところで、それなりに満足度できる結果となりました。

まとめ

  正直に言えば、単価交渉失敗したなーといった、反省すべき案件も少なくありませんでした。まあ、そのあたりは伸びしろがあるということで。

 ちなみに、収入面が大きく変わらない場合であっても、会社勤めの時と比較すると信用力が大きく低下する点には注意が必要です。各種ローンの審査などはかなり通りにくくなります(当然、独立して数年間の確定申告を積み上げることで回復していきますが)。家を買うなら独立前に、というところでしょうか。

 今回は収入面にフォーカスしましたが、当然支出側もよく考える必要があります。その辺りはどのような形態で展開していくか(事務所を借りるのか、人を雇うのか、など)との兼ね合いもありますので、またの機会に。

 生活に最低限必要な金額、というのは各人によって異なってくるものかと思いますが、今後独立を考えている方の参考になれば幸いです。

  そんなわけで、「会計士として大した業務経験が無くても意外となんとかなりましたよ」というお話でした。