独立会計士のおぼえがき

独立会計士として過ごすためのあれこれを文章にしてみる。

ツールについての話①

 独立を決めたとなると、様々なツールを用意することになります。例えば、メールを始めとしたコミュニケーションツール、情報発信用のSNS、請求書管理ツールや帳簿付けのための会計ソフトなど、会社員として働いていると会社が用意してくれているツールも自分で用意する必要があります。

 今回は、独立にあたって私が使ったツールのうち、便利だったもの、便利そうなものを紹介していきたいと思います。

 というわけで今回のお品書きです。

独自ドメインの取得(利用したサービス:ムームードメイン

 いきなり「それってツールか?」と言われてしまいそうですが、独立にあたってほとんど全ての人が用意することになると思いますので、一応書いておきます。

 ドメインというと、メールアドレスなどの最後についている"@×××.co.jp"とか"×××.com"というやつのことですね。この"×××"を好きなものに設定したのが独自ドメインです。

 ちなみに"co.jp"や".com"などの有名どころの他、".info"".tokyo"".work"など、結構色々種類があり、価格も様々です。概ね有名なものは利用料金が高く(といっても年間数千円程度)、そうでないものは安い(年間1円のものも)です。

 こだわるかこだわらないかは人それぞれですが、一応有名どころの方が外部からの信用が得られやすい、ということがあるとかないとか。

 ちなみに、公認会計士であれば公認会計士協会のメールアドレスが割り当てられているので、そちらを使うこともできます("@ms01.jicpa.or.jp"といったドメインになっています。"ms01"の部分は人によって異なることがあるようです)。

 私の場合は個人事業主として会計事務所を持ちつつ、株式会社を設立して役員となる、というスキームで運営していますので、株式会社用に独自ドメインを取得し、主にこちらを使いつつ、個人で受けた業務については協会アドレスを使う、という運用にしています。

 ドメイン会社はいくつもありますが、私の場合は「ムームードメイン」で独自ドメインを取得しました。運営会社のGMOペパボが大手であることと、先輩からの勧めで選んでしまったので、正直あまり比較検討はしていません。「年間高々数千円の違いで信用が落ちるかもしれないのは嫌だ」というわけで、無難に"co.jp"のドメインを取得しました。

グループウェア(利用したサービス:Google Workspace)

 グループウェアとは、情報共有のための様々なツール(メールやチャット、共有ストレージなど)を含むサービスのことです。対クライアントとの連絡ツールという意味合いもありますが、私は他にも数名のメンバーと一緒に独立していますので、社内のデータ管理・情報共有ツールが必要という事情もありました。

 結論から言うと、Google Workspace(以前はG Suiteという名称でした)を利用しています。無料のGメールを利用されたことのある方は多いかと思いますが、Google Workspaceは基本的には無料版Gメール及びその他Googleサービスの強化版です。

 Gメールによるメール機能、Google Driveクラウドストレージを始め、カレンダー、チャット、テレビ会議システムなどが含まれています。有料版の特徴として、無料版のGメールでは"@gmail.com"となっているドメインを、独自ドメインで利用することができます。私の場合は、ムームードメインで取得した独自ドメインGoogle Workspaceに適用して利用している、という具合です。

 とりあえずこれさえあれば仕事が始められる、というくらいツールが充実していながら、利用料金は1ユーザー当たり680円/月(2021年8月現在)と、費用対効果が抜群に高く満足度も高いサービスです。

 そもそも、仕事用のノートPCはMicrosoft Officeのプリインストール版を用意していました。前職で使って慣れていたoutlookを活用できることを前提に利用サービスを検討した結果、Google Workspaceにたどり着きました。具体的には、GWSMOというプログラムをインストールすることで、GメールとGoogleカレンダーoutlookに同期する運用をしています。

 他にも、ノートPCのデスクトップにGoogle Driveと同期するフォルダを作成して重要なデータを格納したり、税務業務で確定申告に必要なお客様の情報を集めるためにGoogle Form(アンケート機能)を利用するなど、様々な場面で活躍してくれています。

 また、私の場合はGAS(Google Apps Script)というスクリプト言語を少しだけ活用して、便利そうな機能をカスタマイズしています。例としては、

・メールに添付された特定の条件を満たすファイルをGoogle Driveに自動保存

・朝にGoogleカレンダーから本日の予定を取得してLINEに通知

・夕方にGoogleカレンダーから明日の予定を取得してLINEに通知

スプレッドシートに入力した予定をカレンダーに一括登録

 などの機能を作成して利用しています。

 すでに新しいツールの導入にあたっても各種Googleサービスとの親和性がポイントになったり、業務フローの一部として定着するなど、すっかり根幹をなすツールになっており、手放しがたい状況となりました。

会計システム(利用したサービス:freee会計)

 独立にあたって初期段階で帳簿付け用のサービスを検討した辺り、会計士っぽいなという気がします(それが良いことかはともかくとして)。

 大手監査法人で監査業務に従事している場合、クライアントの規模が大きいことが多いので、会計システムというと勘定奉行、オラクル、SAPなどを思い浮かべるのではないでしょうか。

  他方、個人事業主をメインターゲットとした会計システムについてはあまり馴染みがないかもしれません。有名どころでいうと、freee会計、MFクラウド、やよいの青色申告など。

 上で名前を挙げたような会計ソフトには、それぞれ記帳を効率化(自動化)できる仕組みが搭載されています。いずれも一定期間無料で試せるプランが用意されているので、気になる方はそれぞれ登録して触ってみると良いかもしれません。

 私の場合はいくつかの会計ソフトをいじってみましたが、結局freee会計を使うことにしました。各ソフトには、ネットバンキングの明細やクレジットカードのWeb明細と情報を同期し、記帳を自動化する機能があるのですが、その辺りの条件設定を一番細かく設定できそうだったのが決定打でした。

 ちなみに、freee会計では個人事業主であれば980円~/月、法人であれば1980~/月のプランがありますが、これ以外に会計事務所向けのプランというのがあります。要は税務顧問を抱えて税務業務をやっていこうという事務所向けのプランで、一般のプランとはやや機能の範囲や料金体系が異なります。私はこの会計事務所向けプランを契約しています。料金は付帯サービスその他の条件に基づいて個別見積りのようなので詳細は伏せますが、40万円弱/年となっています。

 なお、導入ソフトの検討にあたり、クラウドサービス以外の会計ソフトは全て選択肢から外していました。そもそも導入が簡単、コストが安いといった理由もあるのですが、将来必ずクラウド会計ソフトが主流になるという見込みがあったためです。

 個人事業主が利用する会計ソフトに関しては、全体に占めるクラウド会計ソフトの割合が2019年には約20%程度であり、現在(2021年)ではその割合は25%程度まで上昇しているといわれています。

 これは、少なくとも新規に導入される割合として、クラウド会計ソフトの割合が高い、ということだと考えています。ひとまず最初の段階では創業間もない個人事業主ないしは法人をメインターゲットにしよう、という絵もありましたので、その絵にマッチした選択を行ったつもりです。

まとめ

 わざわざ記事タイトルに「①」とつけているのは、思いのほか記事が長くなってしまったためです。ほかにも使ってみて便利だったもの、検討はしたけど導入にはいたらなかったものなどもありますので、別の機会にまたご紹介したいと思います。

 ただ、ツールというのはとにかく使えば効率化するものばかりではありません。特に会計ソフトは顕著ですが、かつての会計ソフトというのは、自社の業務フローに合わせた使い方をする(必要に応じてそのためのツールをカスタマイズをする)という考えのもとで運用されることが多かったようです。

 一方、クラウドサービスを中心としたツール群は、最大限の効率化を発揮するための「正しい使い方」があらかじめ想定されていることが多い、という点で、そもそも設計思想が異なります。ツールの導入にあたっては、それを最大限活用するための業務フローの見直し・設計がセットだ、ということを頭に入れておくことが重要なのだと、記事を書いていて再度思い直した次第です。

 というわけで、今回はツールについての話でした。